足腰が弱って自宅での歩行が困難になってくると、手すりがあると安心です。
介護保険を利用すると、自己負担1〜3割で手すりの取り付けが可能です。しかし、取り付けてから申請すると、費用は返ってきません。
本記事では介護保険適用の条件や申請の流れ、注意点についてわかりやすく解説します。介護保険を活用して安全な住環境を作りましょう。
自宅に手すりを取り付けるメリット
自宅に手すりを取り付けるべきかどうか悩まれている方が、多いのではないでしょうか。メリットは、主に3つあります。
- 歩行補助
- 立ち上がり・起き上がり補助
- 転倒・転落防止
順番に確認していきましょう。
歩行補助
歩く際は手すりに捕まると、足腰にかかる負担を軽減できます。手すりを使うと体のバランスが取りやすくなり、歩くときのサポートとなってくれます。
高齢になると、筋肉の低下は避けられません。
さらに病気による麻痺や身体機能の低下によって歩行したくなくなる方もいます。
しかし、手すりがあれば体の支えができ、歩きやすくなるため自分で歩こうと前向きな気持ちになりやすいです。
立ち上がり・起き上がり補助
日常生活における立ち上がり・起き上がりの補助にも、手すりが役立ちます。
手すりがあれば体への負担が軽減され、動作がスムーズになるためです。
例えば浴槽や便座からの立ち上がり、ベッドからの起き上がりなどが挙げられます。
手すりがあれば日常動作がスムーズになり、自立した生活が目指せます。結果的に介護する方の負担も軽減できるでしょう。
転倒・転落防止
手すりがあれば、転倒・転落の防止につながります。高齢になると運動機能が低下するため、バランスを保ちづらくなります。
そのため、段差で踏み外したり、足を滑らしたりしやすくなるでしょう。
しかし、踏み外したり足を滑らせたりしたときに支えになるものがあれば、転倒・転落を防げます。
階段はもちろん、玄関や浴室などの少しの段差でもリスクがあるため、手すりがあると安心です。
手すりの取り付けにおける介護保険の適用範囲
手すりを要介護者に必要な生活動線に設置するときに限り、介護保険が適用されます。介護保険の適用範囲は、以下の3つのパターンごとに異なります。
- 取り付けにあたって自宅改修する場合
- 自宅改修不要で手すりをレンタルする場合
- 自宅改修不要で手すりを購入する場合
それぞれに限度額や設置場所の指定がある点に注意しましょう。
取り付けにあたって自宅改修する場合
自宅改修が必要な場合、介護保険サービスの住宅改修制度の対象です。自己負担は1〜3割の間で、20万円が限度額と定められています。
例えば、取り付け工事に30万円かかった場合は、自己負担額は3〜9万円です。
しかし、工事が行われたあとに給付される自治体もあり、その場合は一度工事業者に全額支払わなければなりません。
自宅改修不要で手すりをレンタルする場合
自宅改修なしで手すりをレンタルする場合は、介護保険サービスの福祉用具貸与が対象です。自己負担は1〜3割の間と定められています。
例えば手すりを5,000円でレンタルした場合、自己負担額は500〜1,500円です。
ただし、車いすや歩行器など、ほかの福祉用具も含めて要介護度別に1ヶ月あたりの限度額が決まっているため、負担額に注意しましょう。
自宅改修不要で手すりを購入する場合
自宅改修が不要で手すりを購入する場合、介護保険サービスの特定福祉用具販売制度の対象です。
自己負担は1〜3割の間と定められています。
例えば、10万円の手すりを購入した場合、自己負担額は1〜3万円です。
ただし、特定福祉用具販売制度は年間10万円までしか利用できません。
また、手すりは浴槽用手すりしか認められていないため、負担額に注意しましょう。
介護保険を使って手すりを取り付ける条件
介護保険を適用できる条件は、要支援1・2、要介護1~5の認定を受けていることです。
ただし、介護保険サービスの住宅改修制度を使う場合は、要介護者の自宅のみが対象となっている点に注意しましょう。
具体的には、一時的に息子夫婦の自宅に身を寄せている場合や、施設に入居していて居住の実態がない場合には利用できません。
介護保険で手すりを取り付ける場合の流れ
介護保険で手すりを取り付ける場合、正しい手続きが必要です。流れは、以下の通りです。
- 役所・ケアマネージャーに相談する
- 申請書を市町村役所に提出する
- 取り付け工事を行う
- 市町村役所に事後申請する
- 介護保険給付分が支給される
今回は、介護保険を使って自宅改修するときの流れを説明します。
役所・ケアマネージャーに相談する
もし介護認定を受けていないのであれば、まずは市町村の担当課に相談しましょう。
訪問調査が行われ介護認定審査会を経て要支援・要介護の認定を受けます。
申請から30日以内に7つの区分に分けて認定されます。
そのあと、担当ケアマネージャーに手すりが必要な理由や要介護者の状況を相談しましょう。
聞き取りをもとに、ケアマネージャーがケアプランを作成してくれます。ケアマネージャーがいない場合は、地域包括支援センターに相談できます。
申請書を市町村役所に提出する
つづいて、事前申請のために申請書と必要書類を市町村役所に提出しましょう。
事前申請には、工事内容や工事の見積書が必要です。
つまり、事前申請以前に工事業者を選定しておかなければなりません。
介護保険の自宅改修に対応している業者に相談し、手すりを取り付ける場所や費用の提案を受けましょう。
工事開始前に、以下の書面を市町村役所に提出します。
- 申請書
- 理由書
- 見積書
- 改修図面
- 改修前の写真
理由書の作成には、ケアマネジャーや地域包括センターの職員の協力が必要です。
また、事前申請の審査には2週間程度かかります。早めに申請し、審査が通ってから着工するよう注意しましょう。
取り付け工事を行う
市町村役所審査が通ったら、ようやく着工です。改修図面通りに手すりを取り付けてもらいます。
工事完了後、一旦全額料金を支払わなければなりません。
ただし自治体によっては、受領委任払いが採用されています。その場合は、自己負担分をリフォーム業者に支払います。
市町村役所に事後申請する
改修が完了したら、市町村役所に事後申請を行います。以下のような資料を提出しましょう。
- 工事完了報告書
- 領収書・内訳所
- 改修後写真
提出した資料をもとに、介護保険給付の審査が行われます。
介護保険給付分が支給される
市町村役場は、事前に提出された書類と改修後に報告された書類の確認を行います。
内容を見て支給が必要だと判断された場合に限り、介護保険給付分が登録した銀行口座に支給されます。
審査に1〜2ヶ月かかる場合もあるため、支給のタイミングは各自治体に確認しましょう。
介護保険で手すりを取り付けるときの注意点
介護保険で手すりを取り付けるときに注意すべきポイントは、以下の2つです。
- まずは介護保険申請をする
- 自治体独自の補助金制度がないか確認する
自己負担をできるだけ軽減して手すりを取り付けましょう。
まずは介護保険申請をする
手すりを取り付ける際、まずは介護保険を申請しましょう。
事前申請制のため、先に改修工事を依頼したり、レンタル・購入をしたりすると、介護保険が適用されません。
また、介護認定を受けていなければ介護保険申請もできないため、市町村役場へ相談しましょう。介護認定にも時間がかかる点に注意が必要です。
自治体独自の補助金制度がないか確認する
介護保険以外に自治体独自の補助金制度を設けている場合があるため、活用できる補助金制度があるかを確認しましょう。
介護保険の併用が認められている制度や、介護認定されなかった場合に活用できる制度など、自治体によってさまざまです。
自治体の補助金制度も事前申請となっている可能性があるため、改修工事や購入、レンタルをする前にお住まいの自治体へ相談しましょう。
介護保険を賢く使って安全な住環境を作ろう
手すりを自宅に取り付ける場合、介護認定を受けていれば介護保険が使えるかもしれません。介護保険が使えると、自己負担は1〜3割で済みます。
担当のケアマネージャーや地域包括支援センターに相談し、手すりが必要である現状を伝えましょう。
介護保険を活用して手すりを取り付けるためのサポートをしてくれます。
また、独自の補助金制度を設けている自治体は少なくありません。積極的に活用し、安全な住環境を整えましょう。
もし、手すりの取り付けでお困りであれば、弊社にお気軽にお問合せください。
Q:手すりの取り付けで介護保険を使う条件を教えてください。
A:介護保険を適用できる条件は、要支援1・2、要介護1~5の認定を受けていることです。自宅改修や購入、レンタルによって使える制度が異なります。それぞれに細かな条件があるため、役所・ケアマネージャーに相談しましょう。
Q:介護保険で手すりを取り付ける場合の流れが知りたいです。
A:まずは、役所・ケアマネージャーに相談し、申請書を提出しましょう。改修工事を行ったあと事後申請を行い、内容が認められれば介護保険給付分が支給されます。